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エネルギー革命を担う、ペロブスカイト太陽電池とは?

  • update:
    2023.08.08
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    blog

近年、地球温暖化対策やカーボンニュートラルの推進が全世界共通の課題となっています。
その解決策の一つとして注目されているのが再生可能エネルギーであり、なかでも太陽光発電の重要性が増してきています。

しかし、太陽電池の性能や製造コスト、また、メガソーラーシステムに代表される大型発電施設を建設するための土地問題など、解決すべき課題は多く残されています。ここで注目されているのが「ペロブスカイト太陽電池」です。

本記事では、従来の太陽電池が抱える課題の解決が期待されている「ペロブスカイト太陽電池」について解説していきます。

ペロブスカイト太陽電池とは?これまでの太陽電池との違い

ペロブスカイト太陽電池は、太陽光を吸収するための吸収層に「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ材料を利用した太陽電池のことです。

ペロブスカイトとは、灰チタン石(CaTiO)という鉱物のことで、ロシアの鉱物学者レフ・ペロフスキーの名前が由来となっています。

下記の図のように、キューブの中に、そのキューブの各面の中心点を繋ぎ合わせた八面体が存在しているような結晶構造となっているのが特徴です。

ペロブスカイト太陽電池では、有機・無機ハイブリッドのペロブスカイト材料が多く使われています

ペロブスカイト太陽電池は、その素材の特殊な性質を活かすことで、これまでのシリコンベースの太陽電池と比べて、薄くて軽く、そしてより効率的な発電ができる太陽電池として、今後の活用が期待されています。

ペロブスカイト太陽電池の開発経緯と最新の研究

元々ペロブスカイト材料は、センサーや発光ダイオードなどの電子材料として研究されていましたが、
2009年に横浜桐蔭大学の宮坂教授らによる太陽電池の光吸収材料として活用した研究報告をきっかけに、世界的に研究が行われるようになりました。

開発当初は発電効率が従来のシリコン太陽電池の1/8ほどでした。
しかし、世界中の研究者がこの新しい材料の可能性を追求して日夜研究を続け、現在では従来型のシリコン太陽電池と遜色無いレベルまで発電効率が向上しています。

また、2019年には若宮教授率いる京都大学の研究チームで、ペロブスカイト材料と二酸化スズを組み合わせることにより、発電効率が20%以上の高効率なペロブスカイト太陽電池を作り出すことに成功しました。

このような成功例を受けて、ペロブスカイト太陽電池の実用化・商用化に向けて、世界各国の研究機関や企業が技術開発に力を入れています。ただし、ペロブスカイト太陽電池は多くのメリットがある一方で、実用化に向けた課題も残されています。

ペロブスカイト太陽電池のメリットと課題

世界各国が着目するペロブスカイト太陽電池ですが、実用化まではあと一歩のところまで来ています。

ここでは、従来型の太陽電池と比べた時のペロブスカイト太陽電池のメリットと課題について解説していきます。

メリット1:高い発電効率
ペロブスカイト太陽電池の最大のメリットの一つはその高い発電効率です。

発電効率とは、太陽光が当たったときにそれをどれだけ電気エネルギーに変換できるかを示す指標で、この数値が高いほどより多くの電気を生成できます。

ペロブスカイト太陽電池の発電効率は年々向上しており、一部の研究では従来のシリコンベースの太陽電池を上回る発電効率を達成しています。

また、従来の太陽電池では発電効率が低かった、曇りや室内などの低照度環境下でも高い発電効率を維持することができます。ペロブスカイト太陽電池の高い発電効率が、未来の持続可能なエネルギーソリューションに貢献できることが示されています。

メリット2:柔軟性・軽量性
柔軟なフィルム上にも製造可能で、これにより多くの新たな利用法が可能となります。

例えば、車や電車、船などの車体、テントやウェアラブルデバイス、そしてさらには曲面や不規則な形状を持つ建築物の表面への取り付けなどが可能です。
実際に、トヨタ社とエネコート社の共同で自動車のルーフだけでなく、ボンネットにも搭載を目指した共同開発を開始しています。

このように、柔軟性は新たな用途と市場を開拓する鍵となっています。

メリット3:低コスト
従来の太陽電池に比べて、比較的低コストでの製造が期待されているのもペロブスカイト太陽電池の特徴です。
従来のシリコン太陽電池では、高温で長時間の焼成工程が必要です。

一方で、ペロブスカイト太陽電池は素材を塗って乾かす低温プロセスで製造できるため、
大規模な生産が可能になれば、1ワットあたりのコストがさらに低下することが見込まれています。

また、軽量であるが故に、輸送・設置にかかるコストも大幅に削減できるようになります。

課題1:大面積化の難しさ
ペロブスカイト太陽電池は、塗布することで製造できる反面、高い発電効率を維持するためには塗布した膜の厚さ、膜質を精密にコントロールすることが必要となっています。

しかし、現在の技術では膜の厚さの均一性、高品質な膜質を担保しながら広い面積の塗布が難しいのが現状です。
そのため、一度に大量生産ができず、現状の製造コストを含めて実用化に向けた壁になっています。

課題2:耐久性の問題
実用化に向けては、耐久性の観点も課題となっています。
太陽電池は、雨、風、雪、紫外線、そして高温や低温など、実際の使用環境においてさまざまな環境ストレスに耐えなければなりません。

現状、ペロブスカイト太陽電池はこれらの環境変化によって劣化しやすいという課題があります。特に湿気はペロブスカイト材料にとって大きな問題であり、水分が浸入すると電池の内部で化学反応が起きて性能が低下してしまいます。

耐久性の課題については、京都大学を初めとする様々な研究機関で、日々研究がなされています。

ペロブスカイト太陽電池の未来

ペロブスカイト太陽電池の可能性を最大限に引き出すためには、製品化に向けた具体的な研究開発と実証実験が求められます。

この取り組みは、政府や企業、大学が協力して進めています。

まだ商用化に向け課題は残されていますが、ペロブスカイト太陽電池がもたらすエネルギーの変革は、持続可能な未来社会を創出するための重要な鍵となるでしょう。

株式会社エネコートテクノロジーズは、京都大学発のテクノロジーベンチャーです。
ペロブスカイト太陽電池の実用化に向け、産・官・学で連携をとりながら、クリーンエネルギー、カーボンニュートラル社会の実現に向けて日々取り組んでいます。

 

https://enecoat.com/

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