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ペロブスカイト太陽電池の構造と発電メカニズム

  • update:
    2023.09.11
  • category:
    blog

ペロブスカイト太陽電池の発電メカニズムは他の太陽電池と同じですが、太陽電池に利用される素材が異なります。
今回はこのペロブスカイト太陽電池のデバイス構造や発電メカニズムについてご説明いたします。

・ペロブスカイト太陽電池とは?
ペロブスカイト太陽電池とは、
ペロブスカイト構造と呼ばれる結晶構造の物質を使用した太陽電池です。
ペロブスカイト太陽電池は2009年に横浜桐蔭大学の宮坂教授の研究グループにより報告されました。当時は変換効率が4%程度と低かったのですが、変換効率の向上ともに世界中の研究グループの注目を集め、開発競争が始まりました。

そして、ビジネスチャンスを見込んだ企業の参入も追い風となり、
2023年8月現在では、変換効率26.1%を実現し、シリコン型に追いつく変換効率が実現されています。
研究の歴史についてはペロブスカイト太陽電池に関わる研究の歴史という記事で解説しております。

ペロブスカイト太陽電池の特徴として、薄く柔軟、かつ軽量のため設置場所の幅が広がること、また低照度での発電効率が高いことが挙げられます。
一方で、現状のペロブスカイト太陽電池はシリコン太陽電池に比べて耐久性に劣ることや、設置に関する関連技術の開発などの実用化に向けた課題の克服に取り組んでいるところです。

シリコン太陽電池とペロブスカイト太陽電池の比較表

・ペロブスカイト構造とは?

出典:エネコートテクノロジー株式会社,会社案内標準230607のP5より一部加工(カチオン等の語句を消去)
ペロブスカイト構造は以下の図のように一般化されています。
A、B、Xにはそれぞれ原子や分子が配置されます。

結晶構造の中心にあるBは鉛やスズ、ビスマスなどの金属が使用されます。そして、このBを取り囲むように6個のXにより8面体が作られます。

この8面体に8個の正のイオンであるAが6面体を作るように配位されてペロブスカイト構造が完成します。
結晶を構成する最小単位である単位格子に注目すると、Aは立方体の8つの各頂点に1/8の体積の原子が存在するため、単位格子中には1/8×8=1個のAが使用されています。

また、Xは立方体の6つの各面に1/2の体積の原子が存在するため、1/2×6=3個の原子が使用されています。Bは立方体の中心に1個あるのみなので、単位格子中には、A:B:X = 1:1:3の比率で各原子が存在しています。

・ペロブスカイト太陽電池の構造

ペロブスカイト太陽電池は

①裏面電極
②正孔輸送層
③ペロブスカイト層
④電子輸送層
⑤透明導電膜

の5つの層構造に分かれています。

①裏面電極
デバイスの後端部に位置し、正孔輸送層からの正孔を集めて外部回路に供給する役割を果たしています。

②正孔輸送層
正孔輸送層は、ペロブスカイト層で発生した正孔を効果的に収集する一方、電子の流れを妨げる役割を持っています。

③ペロブスカイト層
ペロブスカイト太陽電池の肝となる層です。ペロブスカイト層で太陽光を吸収して、電子と正孔を生成します。

④電子輸送層
電子輸送層はペロブスカイト層で発生した電子を効果的に収集する一方、正孔の流れを妨げる役割を果たしています。

⑤透明導電膜
透明導電膜は、金属材料と同じように導電性を持ちながら、可視光を透過する性質を持つ材料で形成される層です。電子輸送層から電子を集め、外部回路に流す役割を果たしています。インジウムスズ酸化物、フッ化スズ酸化物などが素材となっています。

・ペロブスカイト太陽電池の発電原理

ペロブスカイト層に太陽光が届くと、光エネルギーによって自由電子(マイナスの電荷)と正孔(プラスの電荷)が生成します。

このとき、ペロブスカイト層の上下を電子輸送層・正孔輸送層の2種類の層によって挟み込むと、自由電子は電子輸送層に、正孔は正孔輸送層にそれぞれ移動します。これにより、電子の流れ=電流が発生します。
これが、ペロブスカイト太陽電池の発電原理です。

また、ペロブスカイト層に太陽光が届く前に、他の層で光吸収が起こると、自由電子と正孔の生成量が減ってしまうため、光が差し込む側には透明な層を用いる必要があります。

一方、ペロブスカイト層で発生した自由電子・正孔をロスなく取り出すため、金属のように電気抵抗の低い層を用いる必要があります。そのため、太陽光が入射する側の電極には、可視光を透過する性質を持ちながら、金属材料と同等の導電性を兼ね備えた透明電極(酸化インジウムすず等)が用いられています。

・従来のシリコン型太陽電池との構造の違い

基本的に、太陽光を吸収することによって発生した電子・正孔対を2種類の半導体で引き抜くという点では、ペロブスカイト太陽電池もシリコン型の太陽電池も同様です。
素材として、結晶シリコンを用いるか、ペロブスカイト層を用いるかが違いとなっています。
このシリコン型太陽電池に欠かせないp型n型のシリコンウェハーは一般的に結晶のため、ペロブスカイト太陽電池のような柔軟性を担保するのが難しいのです。

また、結晶シリコンは、ペロブスカイトと比べて光を吸収する能力(光吸収係数)が数十分の1程度と小さいため、シリコンで十分な量の光を吸収するためには、分厚い膜が必要となってしまいます。そのため、ペロブスカイト太陽電池と比べて重量が重くなり、耐荷重の大きい場所にしか設置できないという特徴の違いが生まれています。

まとめ
ペロブスカイト太陽電池は、その独特の構造により、従来のシリコン太陽電池とは異なる特性を持っています。特に、透明導電基膜から電極にかけての層構造は、ペロブスカイト太陽電池の薄さや柔軟性の秘訣となっています。
この特性を活用することで、これまで設置できなかった箇所への太陽電池の設置ができるようになったりとさらなる自然エネルギー活用に繋がると期待されています。

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