日本でのペロブスカイト太陽電池の研究が注目されている理由
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- update:
- 2023.08.29
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・日本で研究がすすむペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト太陽電池は、従来型のシリコン太陽電池の欠点を補うことのできる、新型の太陽電池です。その、薄く、軽量かつ柔軟な特徴や、発電効率の高さから大きな期待が寄せられています。
中国や欧米諸国をはじめ、世界中で注目されているペロブスカイト太陽電池ですが、
日本も世界で2位の特許出願数を誇っており、このペロブスカイト太陽電池の研究が盛んに行われています。
・ペロブスカイト太陽電池がなぜ日本で注目されているのか
世界的に注目されているペロブスカイト電池ですが、特に日本で注目されている理由はなぜでしょうか。
以下にその理由を紹介します。
・レアメタルに依存しないエネルギー源だから
ペロブスカイト太陽電池の一つの特徴は、主原料にレアメタルを用いないことです。
ペロブスカイト太陽電池の主原料は鉛とヨウ素です。日本のヨウ素生産量は世界第2位であり、また、鉛も元々産出量が多く、世界的に安定した供給が見込まれています。
日本国内における素材調達が安定的で対外的な情勢には左右されることなく、安定的に太陽電池を供給していくことが可能になるとされています。
・日本が研究をリードしているから
もとより、ペロブスカイト太陽電池は、2009年横浜桐蔭大学の宮坂教授により考案された日本発の技術です。
そこから世界各国で研究が進み、ペロブスカイト太陽電池の変換効率は急速に向上し、
一部ではシリコン太陽電池の変換効率を上回るまでになりました。
また、特許の出願数においても、前に述べたように世界2位の特許出願数と未だに世界的にリードしている国なのです。
この研究アドバンテージを有効活用することで、これから拡大していく世界的な太陽光発電需要において、日本がシェアを獲得できると期待されています。
・従来型の太陽光発電に適した土地が少ないから
日本政府が目指す太陽光エネルギー需要を満たすためには、太陽光発電施設の増設が必要となってきます。
しかし、日本の国土の約70%は山地・丘陵地であり、メガソーラー施設のような大規模太陽光発電施設を新設するためには森林の伐採など環境破壊に関する懸念点が指摘されています。
また、都市部については、例えば東京都では太陽光パネルの設置に対する補助金事業も行っておりますが、基本的に建物の屋根に設置場所が限られるため、設置箇所には限界があります。
ペロブスカイト太陽電池では、その軽さや柔軟性から、従来型の太陽光パネルの設置が難しかったビルの壁面や、耐荷重が低い屋根、あるいは屋根の曲面に設置することも可能になると期待されています。
平野が少なく山間部の多い日本において、新たな設置箇所の開発は、日本政府の掲げるカーボンニュートラルの達成のためには必要不可欠でしょう、
・日本政府のペロブスカイト太陽電池に対する取り組み
2050年のカーボンニュートラルに向けて、日本政府も太陽光発電に関する補助金や、関連企業への投資などに力を入れています。
その一端として、カーボンニュートラル達成に必要な官民の投資資金の財源として「GX移行債」を発行し、合計で150兆円規模の投資を推し進めています。
また、岸田総理は、2023年4月の記者会見において、
ペロブスカイト太陽電池について、日本の技術と材料の強みを活用して、量産技術の確立、需要の創出、生産体制の整備を進め、早期の社会実装を目指すことを明らかにしています。
ペロブスカイト太陽電池の実用化に日本政府としても注力していることがわかります。
・実用化が今後の鍵を握る
ペロブスカイト太陽電池の将来的な有用性から、数多くの企業や研究機関で研究が進められ、2023年7月時点で従来のシリコン型太陽電池と同等以上の発電効率を達成しています。
その一方で、温度や湿気の影響を受けやすい欠点もあります。実際に使用が想定される屋外環境下で、シリコン型太陽電池のように数十年稼働し続けられるような、コーティングの技術開発が求められています。
また、軽量なペロブスカイト太陽電池は、ビルの壁面への設置も期待されていますが、実際に設置するにあたり、太陽電池を壁面に固定するための機材や配線関連など、間接的な技術開発も求められます。
これらの課題を解決するためには、日本の官民学が協力して、ペロブスカイト太陽電池の技術開発を推進していくことが重要となります。
参考:
https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/document/index/needs_2019_solarcell.pdf
・官民学協調でエネルギー革命を目指す。
前述したように、日本政府としても多額の資金を投じ、経済産業省をはじめとする政府機関、各種研究機関、そして民間企業が一体となって、この新型太陽電池の開発に取り組んでいます。
2023年4月4日に富士経済が発表した、ペロブスカイト太陽電池の世界市場に関する調査結果では、2020年代半ばに量産が本格的に進むと見られ、2035年にはペロブスカイト太陽電池の市場規模は1兆円の市場規模になると予測しています。
日本の研究、技術力を活かしてペロブスカイト太陽電池の実用化を進めることで、カーボンニュートラルの達成だけでなく、世界的な日本の競争力向上に繋げることができるでしょう。